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[学会情報]米国心臓協会(AHA)学術集会2011
(2011年11月12日~16日 in オーランド)
非常な勇気をもってこの低用量を選択した
Bode氏に聞く––ATLAS-ACS 2 TIMI 51

Christoph Bode氏
Christoph Bode氏

ACS二次予防における抗凝固薬追加の臨床的意義をお教えください

先行試験から,凝固系を阻害すればある程度の二次予防が得られることはわかっていました。これには,急性冠症候群(ACS)の既往を有する患者に対するワルファリンのエビデンスも含まれます。しかし,抗凝固薬によるACSの心血管イベント抑制効果に対する期待はAPPRAISE-2試験1)によって否定的となりました。同試験ではACS症例の心血管イベント予防として,心房細動症例の脳卒中予防試験ARISTOTLE試験2)で使用されたアピキサバン5mg 1日2回が用いられました。ARISTOTLE試験の比較対象は「INR 2-3を標的としたワルファリン治療」ですから,APPRAISE-2試験ではINR 2.5程度以上の強さの抗凝固薬を標準治療としての抗血小板薬に加えたことになりました。同試験はアピキサバンを追加しても虚血イベントは減少せず,出血が約3倍に増加したため,早期終了となりました。

私はATLAS-ACS 2 TIMI 51試験のメンバーであることを誇りに思います。本試験では,適切な用量,適切な患者集団を選択すれば,抗凝固薬であるリバロキサバンを標準的な抗血小板療法に追加することによりベネフィットをもたらし,観察期間内の全死亡をも減少させることを示しました。しかし,本試験の対象症例として,出血イベントの高リスク患者,心房細動を合併した症例,重度の腎機能障害(クレアチニン・クリアランス<30mL/分)は対象から除外されたため,ACSの一部の患者集団において示された本試験の結果をすべてのACS患者にあてはめるには無理があります。これらの患者に対する別途の試験の結果が得られるまでは十分な注意が必要です。また,脳卒中既往を有する患者に対しても,同様に慎重に投与を検討すべきでしょう。

データをみると,リバロキサバンは低用量のほうが高用量より優れていたというのは興味深い結果です。これは高用量では出血が多くなり,虚血イベント抑制効果を相殺してしまったためと考えます。本試験では非常な勇気をもってこの低用量を選択しました。じつはexecutive committeeの内部において,5mgを1日1回投与とするか,2.5 mgを1日2回投与にするかについては討論がありました。本試験のexecutive committeeおよびsteering committeeは,冠動脈での血栓形成は左心耳でのそれとは完全に異なるものと判断しました。リバロキサバンの半減期は10~13時間ですから,低用量で有効性を維持するためには1日2回投与が必要と考えられました。これは賢明な選択でした。つまり,この2.5mg 1日2回投与が,リスクが最小となり,ベネフィットが最大となる,sweet spotをとらえた用法用量だったのです。

1日2回投与のアドヒアランスについてどのようにお考えですか

患者のコンプライアンスは大きな問題です。しかし,われわれが十分に教育し,その薬に己の生命が委ねられていると説明されれば,教育を受けていない患者に比べコンプライアンスははるかに高くなるでしょう。看護師の関与も重要です。患者教育は医師だけでなく,すべての医療従事者が責任を担うべきです。

今回の結果が臨床現場に与える影響とは

この適応が関係規制機関から認可されれば,このランドマーク試験の結果により,本試験で対象となった基準を満たした患者群に対して2剤抗血小板療法(DAPT)+リバロキサバンの3剤併用療法を行うべきだと思います。

DAPTにリバロキサバンを追加することにより,ベネフィットが得られるようなサブグループはありますか

サブグループ解析では,脳卒中既往患者を除くすべてでベネフィットが得られました。つまり,本試験に参加した患者の圧倒的大多数がベネフィットを得ました。

心房細動合併ACS患者に対するリバロキサバンの適切な用量とは

リバロキサバンの大規模試験のうち,本試験ではACS二次予防効果が,またROCKET AF試験3)では心房細動患者における脳卒中予防効果が示されました。この2試験では,それぞれ異なる用法用量が使用されました。

リバロキサバンにACS二次予防と脳卒中予防という2つの適応があることは非常によいことです。しかし,ACS二次予防に有効性を示した用法用量が,心房細動合併ACS患者にも有効かどうかはわかりません。ですから,今回の結果から質問に答えることはできません。心房細動合併ACS患者に対する新たな試験を実施するのが妥当だと思います。そのような試験を実施しようという提案はあるものの,まだ何も決まっておりません。臨床試験が行われ,患者集団に対するメリットが科学的に明らかにされるまでは,個々の症例についてACSとしての心血管イベントの発症リスク,脳出血を含む脳卒中リスクを推測して用量を判断しなければなりません。私なら,脳卒中リスクよりACS再発リスクが高い患者であればACSに対する用量を,逆に脳卒中リスクのほうが高い患者であればアスピリン+クロピドグレルにリバロキサバン20mgを追加します。しかし,これらを推奨できるようなデータは得られていないことを強調したいと思います。

出血リスクに対処するためのよい戦略はありますか

医師は出血に関して特別な問題を抱えています。出血が発生した場合,それは処方薬が原因であるため,抗血栓薬の投与を躊躇します。薬物療法によって脳卒中を予防しても,医師が患者から感謝されることは決してありません。しかしひとたび出血が発生すると,患者やその家族から責められることになります。ですが,躊躇を克服しなければなりません。たとえ出血が発生したとしても,われわれは大多数の患者に対してベストを尽くしています。患者の選択は出血発生数を最小限にするための大きな要素です。リバロキサバンを投与する場合は,本試験で検証された患者集団に限定し,試験で使用された用量を躊躇せずに投与することです。

(監修:後藤信哉)


1) APPRAISE-2: N Engl J Med 2011; 365: 699-708.
2) ARISTOTLE: N Engl J Med 2011; 365: 981-92.
3) ROCKET-AF: N Engl J Med 2011; 365: 883-891.

Profile: Dr. Christoph Bode, M.D., FAHA, FACC, FESC
Chairman, Department of Medicine III, Cardiology und Angiology, University Hospital Freiburg
本試験およびROCKET AF試験executive committeeのメンバーの一人である。

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