ADOPT試験では,内科疾患患者に対して退院後も予防療法を延長するという新しい仮説が検討されました。米国では超短期入院について関心が高まっており,また血栓症が発症すれば医療経済的に大きな負担となることから,非常に重要な試験でした。現在,関節置換術,腹部大手術などの外科患者では静脈血栓塞栓症予防療法の延長が当然のこととして行われています。本試験ではそのような外科患者を対象とした多くの先行試験に準じ,同様のデザインで行われましたが,対象患者が低リスクであったため,ベネフィットを判断するのは難しかったのです。
本試験の最大の問題点は,多くの国で実施されたために超音波検査の結果が入手できなかった,画像の質が高くなかったなどの,検査の質に関するものでした。検査結果は中央判定委員会で判定されましたが,圧迫超音波検査は技師によるところが大きく,特に小静脈においては偽陽性,偽陰性が生じます。つまり,本試験では超音波検査の質に関する問題があらためて提議されました。
抗血栓療法の試験における目標はsweet spotをとらえること,すなわち,出血リスクを上昇させずに血栓症リスクを減少させる用量を見つけることです。本試験でのアピキサバンの用量は,深部静脈血栓症(DVT)に関する小規模試験で得られた知見から選択されました。しかし,最適な用量を得るには時間がかかります。ATLAS-ACS 2 TIMI 51試験ではsweet spotをとらえるような用量が得られましたが,本試験では得られませんでした。
重要な課題の一つは本試験で用いられた戦略についてです。本試験ではアピキサバン群,エノキサパリン群の入院期間中のイベント発症率の曲線は重なっています。そのため,重症患者での発症であったのか,入院期間におけるベネフィットは経口剤と注射剤で同様であったのかなどの議論が起こることでしょう。退院後の経口剤の至適投与期間も未解決です。超低用量の経口剤を退院後の3ヵ月間服用すべきであったか,あるいはもっと短期間でよかったのか。われわれは,急性期DVTでは抗血栓薬の投与を中止したとたん血栓症リスクが上昇することを知っています。また,誘発因子のない DVT患者は基本的には一生涯リスクにさらされており,どんなに長い期間抗凝固薬を使用したとしても,一旦でも投与を中止すればDVTが再発する可能性があります。
もう一つの検討課題は,すべての高リスク患者をカバーするということです。しかし,そのためには定義しなければならないことが多数あります。すなわち,適切な患者,適切な薬剤,適切な薬剤投与量,そして適切な投与期間です。われわれは現在,内科疾患患者の中でのDVT高リスク患者を定義することを試みています。
< 2012.2.02 >
〔最新号紹介〕
THERAPEUTIC RESEARCH vol.33 no.1 2012
< 2012.1.23 >
〔学会レポート:SABCS2011
〕
非浸潤性乳管癌(DCIS)患者の再発リスクを予測する新しい検査
< 2012.1.23 >
〔学会レポート:SABCS2011
〕
糖尿病と肥満は,乳癌発症のリスクを増大させる
< 2012.1.23 >
〔学会レポート:SABCS2011
〕
HER2二量体化阻害剤により,無増悪生存期間(PFS)が延長:CLEOPATRA
< 2012.1.06 >
〔最新号紹介〕
THERAPEUTIC RESEARCH vol.32 no.12 2011